遥かなる幻影!
にこやかさと謙虚さが目立つ普通の青年。
この至って純朴な棋士は、対戦相手にはどう映るんだろうか?
画面で観戦していると、藤井竜王名人は動きが多いと思う。
前傾姿勢で集中している時でも、前後に揺れたり、
上を見たり、腕を後ろで組んだり、下を見たりする。
時々は、
ガックシと頭を落としたり、
首をうな垂れてグッタリしたように見えたりする。
この様子を見て、自信がないのかなを解説で話が出るが、
それは違うよ。
普段、藤井竜王名人を見ていないね。
決して、
自信がなくてのガックシではない。
むしろ、集中して読んで、息抜きに「ガックシ」をしているだけ。
さっきまで互角だったのに、数手進んでみると、
何となく不利な形勢になっているようだと気づき、
改めて、相手の藤井竜王名人を見、様子を伺う。
対局中、対戦相手を見ているの?
対局相手が誰であれ、そんなには相手を見ていないと思う。
それより、盤上の形勢に集中している棋士が主だろう。
見てようが、見てなくても、相手は幻想に惑わされる。
ただ、私は思う。
至って普通の青年が、静かなオーラをまとった存在である。
盤を挟んで座られると、その幻影は巨大化してしまうのだろうか。
朴訥とした和かな表情の青年は、戦場では居なくなり、
指し手が鋭い若き猛者に変身する。
真正面で対峙すると、まとわりつくオーラを感じてしまうのかな。
勝負の鬼神の眩しさの幻影に惑わされてしまうのかな?
それは、これまで勝利し続けてきたから。
余りに辛い勝ち方を続けて来たから。
絶体絶命をひっくり返して来たからか。
対戦相手が、準備万端で序盤優勢なったとしても、
集中し読む返されて、どうしても終盤には反撃されて突破されてしまう。
例え、
優勢勝勢になったとしても、深い読みによって、
毒饅頭や勝負手を撒き散らされ、迷子になっている間に逆転されてしまう。
この繰り返しによって、藤井ブランドという幻影を見てしまう。
ご本人は至って、そんな気はない。
が、相手がどうしてもそんな目で見てしまう。
戦えば戦うほど、差を感じてしまう。
これらが続くと、藤井ブランドが出来上がる。
次は勝とう、せめて1勝はしたいと思っても、
決して、そうはさせてくれない。許してくれない。
遥かなる幻影が見えてくる。
実力勝利の継続によるものだ!
幻影の根底に、尋常じゃなく突出した実力のベースがある。
幻は現実なんだと知らしめられる。